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調査内容
名古屋なんでも調査団の「小説で読む名古屋」で紹介されていた司馬遼太郎の『胡蝶の夢』を読みました。名古屋が出てくるのは登場人物の伊之助に関わる部分で、ほんの数行。医学も勉強していますし、語学の能力がすばらしかったという伊之助です。名古屋での活躍を知りたいです。
調査手順
「伊之助」は幼名ですので、通称の「司馬凌海」で調べます。名古屋市図書館ホームページ内の「なごやコレクション」で「司馬凌海」を検索します。名古屋を中心とした尾張・三河地方に関するキーワードから資料を検索できて便利ですよ。検索結果は4件。どの資料も名古屋時代に触れていますが、『医学・洋学・本草学者の研究 吉川芳秋著作集』が詳しいようです。この本が引用している資料も見てみましょう。
学術論文を検索できる国立情報学研究所のデータベース「CiNii Articles」も使います。見つかった論文を収録している雑誌は残念ながら名古屋市では所蔵していませんが、大学の図書館で閲覧ができましたよ。
調査結果
司馬凌海は明治9年5月に、公立病院と公立医学講習所の副教師通弁兼医校教師として名古屋に招かれました。同年7月、設楽郡上津具村で、病理解剖を行っています。日本人が行った初の病理解剖ではないかと言われています。診断学や薬物学の講義も行っており、医師として活躍していたと言えるのではないでしょうか。名古屋大学所蔵の「公立病院外科手術の図」には、司馬と伝えられる人物も描かれています。
また、名古屋時代の門弟に後藤新平がいます。司馬は口述で翻訳を行い後藤らに筆記させましたが、翻訳が非常に速かったため、筆記者は二人で交代しながらの作業だったそうです。司馬の語学力を感じますね。
外国語塾を開いていた大須の大光院には「故従六位司馬盈之君碑」がありますよ。
今回の調査で使った資料
- 『医学・洋学・本草学者の研究 吉川芳秋著作集』八坂書房 1993
- 『尾張郷土文化医科学史攷』尾張郷土文化医科史攷刊行会 1955
- 『愛知県医事風土記』愛知県医師会/編 愛知県医師会 1971
- 『日本医史学雑誌 第3』日本医史学会/編 思文閣出版 1978
- 『名古屋大学の歴史』名古屋大学史編集委員会/編集 名古屋大学1991