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調査内容
「名古屋の冬は伊吹おろしがふいて寒い」と言われますが、『伊吹おろし』って何ですか。
調査手順
『日本国語大辞典』を引いてみると、「滋賀・岐阜県境にある伊吹山から吹きおろす寒風」と書いてある。出典は、『山家集』の「おぼつかな伊吹颪のかざさきに...」と、謡曲の『舟橋』の中の「さめがゐの宿を過ぎ伊吹颪の音にのみ...」である。さっそく解釈を調べてみると、前者は琵琶湖東岸の港から大津に向う舟が伊吹颪の吹いていく方向であるのを心配している歌。後者では、伊吹颪は近江の歌枕と書いてある。「伊吹おろし」は存在するが、はたして名古屋には吹かないのか。
気象関連の書架をさがすと、『名古屋の気候環境』に、伊吹おろしは、西高東低の冬型の気圧配置の際におこる。市内はビル風等の影響をうけ、地域による風速差が著しいと書いてあった。
「伊吹おろし」余話
『名古屋の気候環境』の著者が「尾張地方の伊吹おろしと校歌」という論文を書いている。愛知県内の小中学校の校歌歌詞に「伊吹おろし」という語が、含まれる学校数を調査したもので、尾張北西部を調査対象としており「伊吹おろし」を含む校歌は26校で全体の12%。名古屋市内はどうかと『愛知の学校校歌詞総覧』を調べてみた。「伊吹」は十数校、「伊吹おろし」は4校もあった。
『新修名古屋市史8巻』にも、「名古屋の四季」の章に伊吹おろしの項目があった。やはり、名古屋の冬は伊吹おろしが切り離せない。
さらに、『伊吹おろしの雪消えて』という第八高等学校史があり、名古屋大学の寮歌に「伊吹おろし」が登場している。なんと鶴舞公園内の図書館の前に「伊吹おろし」碑もあるのだ。
調査結果
「伊吹おろし」は、冬型の気圧配置の際におこる、滋賀・岐阜県境にある伊吹山から吹きおろす寒風のこと。
今回の調査で使った資料
- 『謡曲集 下(新潮日本古典集成)』伊藤正義/校注 新潮社 1988年
- 『名古屋の気候環境』大和田道雄/著 荘人社 1980年
- 『愛知の学校校歌詞総覧』東洋経済新報社 1980年
- 『新修名古屋市史 8巻』名古屋市/編 名古屋市 1997年
- 『伊吹おろしの雪消えて』財界評論社 1973年