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調査内容
アニメ「忍たま乱太郎」に出てくる戸部先生。モデルは名古屋の人って本当? どんな人だったか知りたいです。
調査手順
「忍たま乱太郎」は尼子騒兵衛作のコミック『落第忍者乱太郎』が原作。戸部先生(戸部新左ヱ門)は忍術学園の剣術の先生ですね。質問者の方がお持ちになったコミック※2を見せてもらったところ、モデルとなった「戸部新左衛門」は「今川義元に協力していた武将」との説明が。今川義元といえば、桶狭間の戦いで織田信長に破れた武将。確かにこの地方に関係がありそうです。
名古屋にまつわる郷土資料をお調べした結果、以下のことがわかりました。
調査結果
戸部新左衛門は、現在の南区戸部町付近を支配していた武将といわれています※3。今川義元に味方し、この地を織田勢からよく守っていました。それを疎ましく思った信長は、新左衛門の字を部下にまねさせ、義元を裏切る旨の偽書を書かせ、義元に届けます。勘違いした義元の怒りに触れ、新左衛門は惜しくもこの世を去りました。
現在は南区の富部神社に慰霊碑が、丹八山公園に石碑が立っています。近くには新左衛門が再建したという長楽寺があり、本堂に新左衛門の位牌が安置されています。
新左衛門亡き後、一族は全国に散り散りになりましたが、毎年4月にはご子孫の方々が集まり、慰霊祭を行っているそうです。
今回の調査で使った資料
- 『名古屋市史 [第2巻](政治編 第1)』名古屋市/編 愛知県郷土資料刊行会 1979
- 『南区の歴史探訪 改訂版』池田陸介/文 ブックショップ「マイタウン」 1990
- 『戸部村考』荒川銀次郎/著 荒川銀次郎 1971
- 『戸部保存会の活動記録 戸部新左衛門政直公と共に』戸部保存会 2020
- 『おおいそ』名古屋市立大磯小学校/編 名古屋市立大磯小学校 1973
- 「旅の友『戸部蛙』復活へ」(中日新聞2016年11月17日朝刊)
※1一説には、目の前を横切るものは何でも切り捨てていた新左衛門が、動きの速い蛙は切れなかったことから、お守りとして作られ始めたとか。長らく伝承が途絶えていましたが、2016(平成28)年、富部神社にて復活。
※2『落第忍者乱太郎 1 天の巻』(立風書房)の「そうべえの場外乱闘編」その5より。同じ漫画家である戸部けいこさん(代表作『光とともに...』)から「私のご先祖の名前なの。漫画に使って。」と言われて使ったとのこと。
※3 戸部新左衛門については、中村城(現在の南区桜本町付近)の城主・山口教継(左馬助)と同じ人物であるという説もあります(『南区の歴史(名古屋区史シリーズ 9)』三渡俊一郎/著 愛知県郷土資料刊行会 1986)。今回の報告書については、市民の方より「戸部新左衛門は架空の人物ではないか」というご指摘がありました。図書館としましては、身近なアニメの話題を通じて、多くの方々に郷土資料への関心を持っていただきたいこと、また戸部蛙や慰霊祭など、地域で行われている活動を紹介させていただきたいことから、報告書はこのまま掲載いたします。